家の湯船につかるとだんだん温まるにつれて、湯の温度が下がっていく。どうしても寝る少し前に入りたいものだから、家族が先に入りしばらく経ってから風呂に入る。湯に浸かった当座は暖かい瞬間があっても、温度が低い分「追い炊き」を使うことになる。「温泉であればこんなことはないのに」という気持ちがたまって温泉の旅への楽しみになっている。
我が家のイベントは温泉の旅で、義父母が生きているころには正月と夏には必ずでかけた。今は子供たちの仕事の関係で、正月以外はなかなか揃うことがない。家族で行く場合は「高級感」が選択肢に入ってくるが、我が旅の場合は、永らく釣りで行く旅ゆえ料金が安いところを探して宿を決めていた。釣りは行かなくなっていても、その方針が身についている。
良い宿を紹介する本を見つけて、載っていた温泉宿をねらって出かける。料金もまあまあで紹介されている。その一つが修繕寺の近くにあった。お気に入りになっていて、3度目の訪宿になった。おりしも気温がぐっと下がってきたときで、期待して行ってみた。温泉は透明で掃除がいき届いている。宿は静かなところだし、穀物中心の健康食が良くて、通常の高級料理で食べきれないということはない。
早めに旅館に着いて、ひと風呂浴びに…ところがその湯がぬるい。どうしたことかこれまでは肌合いにピッタリの温度だったのに、なかなか湯船からあがれなくて、もしかしたら地震の前触れなのかなどと考えながら、首まで浸かって長湯してしまった。風呂場に行くには渡り廊下があって風が吹き曝しになっている。さすがに食後の3度目の風呂は寒くてまいった。翌日は修善寺まで出かけて「日帰り温泉」に浸かってきた。