ウロハゼの数奇な運命

 ウロハゼは温暖な、海の暖かい地方がテリトリーだったらしい。関東、東京湾でもよく見かけるが、延べ竿での釣り味に手応えがあっていいのに、格好がちょっとドンな感じでなので持って帰らない人は多い。


この魚は1995年頃から増え始めたとされる研究論文があった。

 ウロハゼは神奈川県レッドデータ生物調査報告書(1995年)希少種Ⅰに指定されていたので、かつては東京湾にも生息していたのだろうと推定ができる。一時期少なくなっていった。高度成長期の河川の汚れなどの影響もあったのだろうか。

 しかし、ウロハゼが増えてきた。この変化についての調査がおもしろい。
「鶴見川河口・下流域におけるウロハゼの増加」調査は「鶴見川流域ナチュラリストネットワーク」が実施した。

2000年に調査したので10年くらい前の状況ということになる。

要旨

==========================
4月から10月までの生麦河口域の調査では、一位マハゼ二位アベハゼ三位ウロハゼという結果。ウロハゼが神奈川県のレッドリスト希少種でなくなっていた。

76年から93年までの汽水、河口域の調査ではウロハゼは採取されていなかった。
97年から98年の生麦地域の「鶴見川を再発見する会」の記録に「ヨシノボリ」がある。これがウロハゼの幼魚だった可能性も言われている。

99年7月市民団体「ウエルパス」の調査記録にはウロハゼの採取記録がある。よって95年以降、数年ウロハゼの顕著な増加があったとみられる。

確定的とは言えないが、いくつかの興味ある可能性が指摘できる。増加の原因は、温暖化による生育、繁殖の拡大が有望な仮説。産卵環境の物理的変化と言う可能性もある。

 鶴見川の河口域は、流下する大型投棄物が多く、パイプなどはウロハゼの好適な住み家になった。

金沢区の平潟湾では、離脱型のプルトップ式の飲み口のある清涼飲料水の空き缶に、チチブが産卵巣として占有的に使っていた。しかし最近はプルトップが離脱せず使用後の開口部が小さな缶が一般的になった。チチブの通常のサイズの雄成魚の進入が難しくなった。

リサイクル、清掃活動の影響で空き缶が減少。これによって餌や産卵巣を競合、相手の補色関係が変わりウロハゼが増加する一因となっている可能性がある。
==========================

慶應義塾大学 日吉紀要・自然科学
リンク
鶴見川河口・下流域におけるウロハゼ


人間社会の活動は、ウロハゼの生息にも影響を与えている。海、山、川を変容させるのは人間社会の干渉によるものと、また考えさせられる。

0 件のコメント:

コメントを投稿