2013年9月15日日曜日

ちょっと寂しい秋の渓流 その2

 三日目は、豊沢温泉方面へ。昨年の同時期にはよい釣果だったとのことで、大沢川の上流部へ行くことになった。車一台がやっと通れる林道をずっと上ると、開けた分流地点に着く。車が一台止まっており、先行者かと疑ってみるが、キノコ採りということもあるので確実なところは解らない。その地点から上下に別れて入渓する。入った渓は浅く細い流れで瀬が多くて、ポイントは少ない。しばらく我慢して登ってみるが、魚信も遠い。Kさんと相談して一緒に下流部へ移動することにした。

 下り口を探して下ると偶然にも、行きがけに見えた滝の上に出た。4メートルほどの滝の下へ、上の方から慎重に回り込んで降りた。1メートル弱の水深で思ったより浅いが、錘を足して重くしてやってみる。すぐに魚の姿が見えたということで、よしそれではと気合を入れかけたところで、分れたSさんが吹く笛の音が聞こえた。時計を見ると集合時間いっぱいになっている。自分は1尾あがったが、Kさんにもなんとか釣れないかと思うが、待ち合わせに遅れるのはまずい。事故の疑いもかけるので断腸の思いで止めて、林道へよじ登った。

 午前中の結果は5人で合計20尾でちょっと物足りない釣果だった。同じ渓流で場所を変えて再度挑戦することになった。大きい岩はなく、歩くのにもそう苦にはならないほどの石があって、イワナの渓そのもの。ポイントは少な目だったが、やりやすい。しかし鳴かず飛ばずの状況で、釣りの意欲が減少するばかりだった、結局合計4尾で「物足りない」以下の状態だった。釣れないせいもあって、ミズが沢山生えているのが目に入った。太めのくきがつやつやして、食材になるかと折ってみたが固くてスッキリ折れない。ムカゴをつけて晩秋への支度をしている。たくさんあればこれも食材になるが、少しでは仕方がない。群生しているので、春にはよいものが手に入るのだろう。
 もう一つの楽しみである大沢温泉の露天風呂。混浴のトキメキを味わいに、行かないわけにはいかないところになっている。川沿いにある風呂から外を眺めて、魚が見えないかと確かめてみるのが通例。今回は外国人の客が入っていた。ラッシュアワーだったのかもしれないが、たくさんの人が入浴を楽しんでいた。

 四日目は早くも帰りの日になる。物足りなさを最後のあがきと釣りをしようと、支度をしているときに雨が強く振りだしてきた。早朝にすごい雨だったとKさんが言う。これでは釣りは無理かなと、次回のために豊沢川の上流部に、ダムの流れ込みを見学に行くことにした。帰り支度を済ませ、一度別荘に戻って昼食後に温泉に入って帰ろうと、たっぷりある時間を有効に使うことになった。

 豊沢湖への流れ込みは川幅が広く平坦で、ところどころに深みもあってなかなかよさそうなものだった。もう20年も前に一度やったことがあるが、平べったい流れを水に浸かりながら上流部に歩いて、深みで釣った記憶がある。水中の移動で気配をさせないように釣ったが、なぜかその場面だけ覚えている。後の記憶がないから、相当感激した思いだったのだろう。岸からちびヤマメの姿が群れて見えるところもあり、釣り道具を持ってこなかったことを残念がった。川沿いに住居を構えている人の話では、今に時期は上流部の細沢で大きいヤマメが釣れることを教えてもらった。支流がいくつかあるので有望なのだろう。次回への期待を膨らますことができた。

 一日目も二日目もちょうど30尾の釣果で、囲炉裏で焼くのとから揚げで食べる夕食の具財として頃合いの量だった。今回は、チビ魚を使い、ゴーヤと絡めたかき揚げが新料理として「発表」された。ゴーヤは湯がいてあるので、苦みが少なくなっている。魚臭がその苦みと相殺されたような感じで、ヤマメの味の良さが浮き立つようだった。釣れている魚の型は小型が主なので、つり味は物足りないが料理になればちょうどいい。大食時期をすぎた中高年ともなれば、量より質への転嫁がなによりで、具合が良いものだった。多少の負け惜しみもあるが。