2020年11月20日金曜日

ハマグリは文化を綴った

 九十九里で多量に打ち上げられたハマグリが、地震の前触れかという説の報道がされている。これも海水温上昇などの気候変動の影響かと推測してしまうが、本当の理由は、千葉の水産総合研究センターが、これから調査をすることになっているとのこと。

 しかし、東京湾では絶滅危惧種、相模湾でも漁でとれたということはないとされるハマグリが、大量に生息しているとの状況を聞いて、ちょっと嬉しい気もしてくる。ハマグリの漁獲量では99%が輸入というところまで、生息環境が変容をせまられてしまった海の環境は、もはや東京湾の潮干狩りではシナハマグリをばら撒いて、ようやく体裁を保っているだけだ。

 まだ浅瀬があったころの浜辺で、海水に足だけ浸って足先で砂をほじくって、ハマグリを獲ったことを思い出す。もう豊饒の海という言葉も絶滅してしまうのだろうか。つるつるした貝の表面は上品で、味はもちろんとてもいい。殻を捨ててしまうのがもったいないほどのものだった。

 平安時代にはハマグリを使った遊びがあったという。ハマグリの殻がしっかりしているので、元の殻同士でないと合わないことから、「貝合わせ」の遊びがカルタの原型になったのだといわれる。合わないことをもって、「貝合わせ」でハマグリの殻が上手く合わずしっくりいかない様子を「ぐりはま」(つまり「はまぐり」をひっくり返した)と呼んでいた。

 江戸時代初期から使われていた漢字辞書「大言海」には、「蛤」の文字をひっくり返した文字を使っていたとの記録があるとか。現在の「グレる」との言葉もこのグリハマからきているらしい。

広辞苑にも「ぐりはま」が載っていた。

―(蛤の倒語)物事の食い違うこと。物事の逆になること。ぐれはま。―

「ぐれはま」…ズレてるまったくずれてる、なんだこの国の政府のこと!