2014年1月16日木曜日

他人事でない海自艦「おおすみ」の事故

広島県大竹市の阿多田島(あたたじま)北東の瀬戸内海で15日朝、海上自衛隊輸送艦「おおすみ」と釣り船が衝突した。釣り船に乗っていた4人が海に投げ出され、うち2人がなくなってしまった。救助したのが桟橋の改修工事をしていた人だった。「訓練中」は準戦闘行動だから、救助活動はしないというのは聞いたことがあるが、「おおすみ」は点検に行くことになっていた。「おおすみは」衝突を避けるために速度を落としたということだし、釣り船の客は後ろ向きに乗っていたら「おおすみ」の接近に気が付いた。船長は前を向いているから気が付かなかったろうと話している。ぶつかったことは想定できたはずだから、すぐ救助しないというのは考えられない。日本の生命財産を守るべき自衛隊が…と思うと非常な違和感を持つ。

事故当時、阿多田島の港では桟橋の補修工事中だった。大竹市阿多田の中村孝春さん(75)が事故防止のため、漁船で周囲の警戒監視をしていた時、数回の汽笛が響いた。作業中の会社員から事故があったと聞き、作業船と2隻で沖へと向かった。
 港から東へ約5分進んだところで、2人が海に浮かんでいるのを見つけた。このうちクーラーボックスをつかみ、浮かんでいた男性1人を船に引き上げた。中村さんが「大丈夫か」と聞くと、男性は「大丈夫」と答えたが、全身が震え、中村さんは「寒くないか」と励ました。


(釣り船乗客の)寺岡さんによると、とびうおの4人は釣り仲間。取材に対し、寺岡さんは「500メートルくらい手前で、おおすみの接近に気がついた」と証言。船前部に後ろ向きに座っていたため気づいたとし、船長の高森さんについては「前を向いて操縦していて気づいていなかったと思う」と説明した。


小野寺五典防衛相は、東京都内の講演で、おおすみの見張り態勢などについて「通常の航行の態勢をとっているので、何か問題があるとは報告は受けていない」とのことだが、都合の悪いことは隠すというのは、いつもそうだから弁解にもならない。素直に報告などするわけもない。救命胴衣を着けていなかったということで、釣り船側の「非」が言われるがそれよりは大きな問題があるだろう。テレビの映像には、自衛隊員が転覆した釣り船になにかしているような様子が映っていたが、民間人に助けられた後に何をしているのだろうかと疑問に思った。調査は海上保安庁に任せるという防衛相の発言とは違っているのではないかと思えた。

海上保安庁は小型船に救命胴衣の着用を求めているが、船内に備えていれば着用しなくても違法ではない。が、着用した方がいいことではある。

毎日新聞の社説が明快な指摘をしている

以下毎日新聞社説コピー

 海上保安庁による捜査と、国土交通省の運輸安全委員会による事故原因の調査が必要だ。乗組員の聴取のほか、船舶自動識別装置による航跡・速度の解析も重要となる。海自は捜査と調査に全面的に協力しなければならない。

 海自の艦船が関係する事故は記憶に新しいものだけでも、神奈川県横須賀港沖で潜水艦「なだしお」と遊漁船「第1富士丸」が衝突し釣り客30人が死亡(1988年)▽千葉県野島崎沖でイージス艦「あたご」と小型マグロ漁船「清徳丸」が衝突し漁船の親子2人が死亡(2008年)▽関門海峡で護衛艦「くらま」と韓国船籍のコンテナ船が衝突し火災が発生(09年)−−などがある。

 防衛省は、あたごの事故を受けて、報告・通報を含む見張り能力の向上と指揮の徹底をはじめとする再発防止策を打ち出している。今回の事故の原因究明を待たずに、再発防止策は末端まで浸透しているか、規律の緩みはないのかについて、改めてしっかりと検証する必要がある。

 あたごの事故では、防衛省幹部による状況説明が二転三転し、国民の自衛隊不信を高めた。同様の事態を招くことがないよう、迅速な情報開示が求められる。

 政府は事故直後、首相官邸の危機管理センターに官邸対策室を設置して対応に乗り出した。この機会に、首相と官房長官が先頭に立ち、自衛艦の安全航行と管理・指導体制の徹底を図るべきだろう。