2021年8月7日土曜日

オリンピック報道を演出する「どなり」今昔

オリンピック実況放送で「前畑頑張れ!」という、アナウンサーの言葉が語り継がれている。1929年オリンピック女子200メートル平泳ぎ種目の決勝戦の放送ー 

「前畑! 前畑がんばれ! がんばれ! がんばれ! ゲネルゲンも出てきました。ゲネルゲンも出ております。がんばれ! がんばれ! がんばれ! がんばれ! がんばれ! がんばれ! がんばれ! がんばれ! 前畑、前畑リード!~~前畑リードしております。前畑がんばれ! 前畑がんばれ! リード、リード、あと5メーター、あと5メーター、あと4メーター、3メーター、2メーター。あッ、前畑リード、勝った! 勝った! 勝った! 勝った! 勝った! 勝った! 前畑勝った! ~~前畑の優勝です」

河西氏の実況アナウンスは、「あらゆる日本人の息をとめるかと思われるほどの殺人的放送」と激賞された一方、「あれでは応援放送で、客観的な実況放送とは言えない」「第三位以下の選手の順位が不明で、スポーツ中継としては欠陥商品だ」といった批判も少なくはなかった…と評されている。

今回のオリンピックでも、実況アナウンスや解説者の「のめりこみ」が気にかかる報道がいくつもあった。「金メダルが…」と煽りたてるばかりの声…。オリンピックの実況放映で「メダル獲得」を至上のこととして、強調されて見苦しく感じた。ニッポン中心に拘泥せずに、少し離れて競争相手の情報や人となりを紹介するなどして、内容を豊かにしてくれれば、もっと楽しめるのにと思う。政権がうしろでメダル獲得を煽り立てて、「何個以上」とかという言葉が飛び交うようでは、オリンピックにおける日本中心の狭さを海外に知らしめるだけだ。

 ちなみにオリンピックには206カ国が参加しているが、メダルを一つでも獲得した国は85か国(7日現在)41%となっており、6割がメダルに関わらずに参加している。

「スポーツを通して心身を向上させ、文化・国籍などさまざまな違いを乗り越え、友情、連帯感、フェアプレーの精神をもって、平和でよりよい世界の実現に貢献すること」のオリンピック精神が、少数の国の「メダル獲得国威高揚」騒動になってしまっては、いかがなものかと思う。

招致わいろ、建設やりなおし設計、エンブレム騒動、費用問題、開会式騒動など盛りだくさんの汚点、コロナ感染拡大下での強行開催など、本来なら再起不能倒産状態というほうが当たっているかも。