2023年6月2日金曜日

残像への思い

 奥多摩駅を上がっていくと、廃墟のような工場跡があった。事情はわからないが、この地での操業を続けることができなかったのだろうか。こういう被写体もなぜか思いが残っているものとして、撮ろうという気持ちになる。

 そう思うのは自分だけではなく、写真を撮るメンバーが持っているようだ。別にきれいでもなく、どちらかといえば普通おめにかかる写真とは違ったものなのに、撮る気を起こすのは写真家の宿命みたいなものなのだろうか。

 美しい花は皆に賛美されて、それは人々の気持ちを安らげる効果もあるのだろう。もう一方の「賛美に値しない写真」は、花であれば美しく咲き誇って人を楽しませた後、枯れてしまった姿にシャッターを押す。花の人生に妙に思いを残すということもあるのではないか。

 賑やかに機械の音を立てながら操業していた工場が、取り壊しもされずにがらんどうの空間を残して…どうなったのだろうか。働いていた人たちはどんな生活をしているのか。カメラを向けた4人は共通した思いを重ねているのだろうと思う。