2015年12月13日日曜日

「共生」で、なぜか旅めくこのごろ。針江 生水の郷へ。

「共生」のキーワードが気になって、自然と共存している気がかりなところに行くことになった。琵琶湖の「川端(カバタ)」だ。11年前にNHKで放映されて、それからずっと気になっていて、いつかは行きたいものと思っていた。「写真屋」としては、自然との共存といういま時は貴重な存在を、ちょっと覗いてみたいと。
先日娘に話したら「行ってみる」という、うれしい返事で、旅行業者に駆け込んで新幹線と宿泊にレンタカーを予約した。NETを検索しまくって情報を探り出したら、地元で案内のボランティアがあるというのが分かった。電話をかけて予約を入れてみると、上手い具合に予約できた。

「川端」と書く各戸にある炊事場が、琵琶湖の周囲にめぐる湧き水を利用している。それが母屋だったり別棟、屋外だったりするが、琵琶湖から掘り出された弥生時代の遺跡からもその形ができているということで、歴史的な時間を経て繋がれていることなのだということだった。24メートルも掘ると水脈にあたるのだと言う。他の池や水路などでも湧き出しているところが見られたので、多くの水が豊かに流れているという印象だった。

NHKの放映のときはその水瓶にはヨシノボリなどの小魚が入り込んでいるようすもあったが、現在はどこでも鯉が幅を利かせている様子だった。NETの地図でわかるのだが、確かに琵琶湖には小さな川がいくつも流れ込んでいるから、豊富な水がわき出ているということだろう。湧水は「川端」に引かれ、壺池に溜まる。壺池からでた水は端池に流れていくが、端池では食器などを漬けておくと、食べ物の屑を淡水魚が全て食べてしまう。水はまた出て小川にでる。小川にはバイカモやほかの水草が一面に生えていて、汚れないように配慮しており、洗剤も無害なものを特注して使っているという話だった。

水路や針江大川には、コイ、オイカワ、タナゴ、ヨシノボリ、サワガニ、カワエビなどが生息しているし、アユも上ってくるということで、人間が棲んでいる環境に、ごく近しい関係の生態系が出来上がっている。日常の「常識」からは信じられないようなことだ。
「針江、生水(しょうず)の郷」という呼び名は、壺池に入る水を生水と呼んでいるのが元らしい。2004年にNHKが放映するまでは(正確には写真家今森光彦氏の指揮でNHKが製作した)、川端も現在ほどの保全は図られずに、上水道も使用していたらしい。家の周りも汚れがあったのだが、放映効果で人が大量に押し掛けたり、家に立ち入られたりということがあった。しかしそこから、案内ボランティアを発想したり、上水道を止めて川端の貴重さを見直していったり、小川の清掃を年に何回もやったりして、針江が「進化」をとげてきたとのことだった。