2021年8月16日月曜日

【東京五輪】 メダルレース、尺度を変えると……アメリカは15位に

BBCニュースからの引用~

個人種目または団体種目での選手間の競争であり、国家間の競争ではないことを事実上無視して、NHKは活躍の証拠だとして発表することを公言しているし、メディアの扱いも大方同様になっている。「メダル争い」が国家間の競争とされ、集約されては平和に貢献することになるのだろうか。日本でも「国威の高揚」に使われていることが当然視されるべく扱われ、開会式での「自衛隊の活躍」を見れば軍事の色彩まで感じてしまう。政権の浮揚まで利用されては、上前を撥ねるという点でも冒涜ともいえることだろう。日本では「人のフンドシで…」「虎に威を借る…」という格言がまだまだ生きている。

~この点でBBCのニュースの記事が面白かった

東京オリンピックのメダル獲得レースは今回も、アメリカや中国といった大国が上位を占め、1位はアメリカだった。しかし、各国の人口や経済力を変数として考慮した場合、順位はどうなるのだろうかーというもの

 ~つまり国ごとのメダル数を単に比較しただけでは「実力」ではないこと

「大事なのは人口と収入レベルと政治体制だというのは、今でも明々白々だ」と、五輪予想を研究する英リヴァプール大学のエコノミスト、デイヴィッド・フォレスト教授は言う。

~人口が大切なのは当然

国の人口が大事なのは、競技人口が多いほど優れた選手が出る率が高くなるからだと、フォレスト教授が言う。「世界的なアスリートになる資質を持って生まれる人はとても少ない。たとえば、人口633622人のルクセンブルクを見てみる。7種目に選手12人を送り込み、メダルは取れなかった。

一方で世界3位の人口規模(約32800万人)のアメリカは、35種目に選手613人を送り込み、メダル獲得数はトップだった。

~人口100万人あたり獲得数では

国の人口100万人あたりのメダル獲得数を比べた、従来とは違うメダル・ランキングを作ってみた。この数え方でいくと、人口わずか33000人超の欧州の小国サンマリノが、獲得したメダルわずか3個でも、ランキング1位になる。一方のアメリカは、この尺度では20位以内にも入らず、60位になる。

 
~貧しい国の場合は

「とても貧しい国の場合、人口という潜在能力を、国際舞台での実際の競争力に転換することができない」と、フォレスト教授。「そもそも国民がスポーツに参加できなければならない。たとえば、競泳の素晴らしい才能を生まれつき持つ人がいて、あとはその能力を引き出すだけだったとしても、国が貧しければプールがない」

貧しい国が勝つのは、たとえばレスリングなど低コストの競技になりがちだと、教授は言う。(~日本は貧しい国だ)一方で、裕福な国は人口規模にかかわらず、馬術やセーリングなどで活躍する。

~国民の平均所得では

国民の平均所得を検討要素に加えると、(メダルレースで2位と3位だった)中国とロシアは、実はアメリカの成績を上回ったことになる。この別バージョンの順位では、1位は中国、2位はロシア、3位はケニアだ。そして、いつもならメダル順位1位のアメリカは、この指標を使うと15位になる。

~政治的文化的要因

フォレスト教授によると、旧ソ連圏の諸国は、かつての共産党政権が構築した強固なスポーツインフラが残っているため、有利な傾向にある。英連邦の国々も、国の規模や経済力に対して比較的、好成績を残しがちだ。これはおそらく、イギリスが現代スポーツ発展の先駆者だったからだろう。イギリスは現代のスポーツ競技を開発すると共に、スポーツ競技への熱意を世界中にもたらした。ほとんど常にメダル数でトップテンに入るオーストラリアが、その典型例だ。

~国がどの競技に選手を送り込むかも関係

インドではクリケットが国民的スポーツだが、クリケットはオリンピック競技ではない。インドではオリンピック競技でもあるホッケーもさかんだが、それだけでは男子チームに1つ、女子チームに1つと、最大2個のメダルしかとれない。一方、体操や競泳や陸上など個人種目が多い競技なら、選手1人につき複数のメダル獲得が可能だ。「一般論として、チーム競技に熱心でもメダル数という意味ではあまり役に立たない」

~メダル獲得数予想は様々な要因がある

データ分析会社ニールセン・グレースノートのスポーツ分析責任者、サイモン・グリーヴ氏は、オリンピックのメダル個数予測が厄介なのは、こうした様々な要因がからみあうからだと話す。人口や人口当たりの国内総生産(GDP)などといった変数だけを使うと、その国のトップアスリートの活躍を過小評価してしまいがちだ。


国別のメダル獲得数で単純に比較しても、国の順位を表すことはできないし、アスリートたちの活躍を正当に評価もできない。テレビ画面に吸い付けられて、感動とその増幅を押し付けられているだけでは到底読み取れないと思った。