2014年1月18日土曜日

投資家デビューで…か

 「私も投資家ですか?」「ワーイとしかデビュー」というコマーシャルがある。投資を若者に誘おうという、「明るい」イメージを感じさせる。株で始める資産運用のサイトにアベノミクスによる効用を宣伝している。

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17回 アベノミクスと株式投資 -株取引初心者への提言-
 アベノミクスの効果もあって日本株の株価が回復して来ました。
民主党政権時代の201211月までは日経平均株価は8,500円~9,000円の間をうろちょろしていました。しかし、20121226日に自民党の安倍晋三氏が内閣総理大臣に再就任してから(厳密には再就任する少し前から)株価の上昇が始まっています。

65日現在では、ピークの15,000円台後半から少し下げ、13,014円の終値をマークしていますが、依然として半年前と比較すると高い水準を保っています。
これもひとえに、安倍首相が打ち出した金融政策による円安の効果だと言われています。日本は皆さんが小中学校で習ったように、輸出産業に依存しており、外国への輸出価格に為替レートは密接に関係してくるため、円安であるのは当面、歓迎することであると言えるでしょう。(もちろん、個々人ではどの産業に自分が属してるかにもよりますが・・・)
本題はそこではありません。

 タイミング良くこの期間に株をはじめて【ガッポリ稼いだ】方も少なくないでしょう。また、株価が上がっていく様子を見て、これから株式投資を始めたいと考えている初心者の方も同様に少なくないと思います。

株を通して利益が出ることそのものは、私は大変素晴らしいことだと思います。ただ心配なのは、「たいして知識もないにも関わらず、この期間にまとまった金額を稼いでしまった株初心者の方の将来」です。
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ビギナーズラックへのご注意にまで及んでのコメントだが、端的に言って博打と変わらないのに「資産運用」とさわりの好い言葉で懐の金を出させようと、この機に虎視眈々と狙われてわれているようだ。

「いずれは賃金に回ってくる」という虚言は、労働組合を経験している人ならすぐに見抜けることだろうと思うが、国会で追及されて財界に「お願いし」マスコミでさえ、「自分のところへは回ってきてないよ」というコメントを報道するに及んで、渋々と動き出すというところだろう。トヨタはこれまででもどれだけ売り上げをあげてきただろうか。1兆円だの2兆円だのと景気の好い収益だったにもかかわらず、「やがてまわってくる」ことなど全然なかったと言っても間違いないことだ。連合の組合「も」、機をみて賃金要求をすると言っている。非正規雇用の方はどうするのだ?証券会社の賃金は3040%の従業員に給料アップをすると発表した。どうして全員ではないのだ?企業サイドから言えば、格差をつけることで競争をあおり、業績のアップにつなげようとするものだろう。

―投資家4723万人
~平成24年度の全国5証券取引所上場会社(調査対象会社数:3,540社)の株主数合計(延べ人数、(注)参照)は、前年度比4.6万人増加して4,723万人となり、また、全体の97%を占める個人株主数は前年度に比べ4.8万人増加して4,596万人となった。個人株主数は、昨年のほぼ横ばいから今年度は小幅ではあるものの増加に転じ、過去最高を更新した。~

 しかし、とは言え所得が少ないことゆえに、株投していくばくかの収入を得たいとする動機もでてくることになる。従業者の半数近くが非正規従業者という、200万円ちょっとくらいの年収で、当たり前の普通の暮らしはできない。ここまで働くものの処遇を切り下げて、260兆円ともいわれる内部留保をため込んだのだから、その本体のため込みを吐き出させたいと思うのが普通ではないのか。残念なことにその力関係にはないが、筋道の上では当然のことだ。「これから回ってくる」のではなくて、これまでのものを出せということになるだろう。

 筋道は明確でも、なかなかその道が遠くて歩けない。日本の財政危機、少子化、社会保険から医療費、消費税増税など生活におよぶ様々な危機が、テコに使われて「投資家への道」が浮かび上がる。雇用の状況が厳しいことで、自衛隊への「就活」に期待が集まっていくのと同様に、日本の進む道と密接につながっていると思うと心穏やかでない。「私も投資家ですか?」というカワイイ女子が、飛び上がるコマーシャルを見ながら、暗然とした思いがする。