2016年1月10日日曜日

削られた伊吹山、琵琶湖の風景にマイナーと映る

 去年、琵琶湖の針江の川端(カバタ)を見て歩いた時、米原の近くから車の窓越しに見えた景色が記憶に残っている。山の一部が「大胆」に削られた伊吹山だ。40年以上にわたって石灰石を採掘しているという事業者のHPを覗いてみた。

~事業者(大阪セメント出資会社)のHP滋賀鉱産()HP
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緑化の道程=
 とはいっても鉱山の緑化は簡単なものではありませんでした。草木を根付かせるためには、石灰石が露出した残壁に 客土を貼り付け、法面を整形するところから始めなければなりません。そのための粘土を斜面まで運び上げるだけでも 大変な作業でしたし、せっかく草木が根付いたかに見えても、雪崩や風雨によって客土ごと流出してしまうこともありま した。このような自然現象への対策や、高地におけるさまざまな厳しい環境と共生させるため、植生方法について専門 家のご指導も仰ぎながら試行錯誤を繰り返して進めてきました。

真の植生復元とは=
緑化の開始から、すでに40年近くが経っています。当時植生した箇所には、草木が自生を始めて、樹木と呼べるまで に成長している所もあります。初期に緑化事業に携わられた方はすでに引退されていますが、試行錯誤して確立した緑 化方法も含めて、現在のこのような鉱山の姿は、先輩方が残してくれた貴重な財産であると思います。鉱山の緑化は 一朝一夕でできるものではなく、植樹した草木が枯れて肥料となり、新たな草木が芽生えるというサイクルを何度も繰り返し真の植生復元となるものです。今後も長いスパンで取り組んでいかなければならないと考えています。

採掘者の担う役割=
前述の通り、伊吹山は、地域にとって自然豊かな心のよりどころであり、貴重な観光資源である一方で、そこで産出される良質な石灰石は、建築材料や工業用原料として国内で唯一自給ができる貴重な天然資源です。石灰石の採掘を担う我々としましては、事業活動を通じて社会に貢献していくと同時に、計画的に緑化を進めることで地域環境との共生 を進めていきたいと思います。
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という具合に、日本の社会におおいに貢献していることを自賛している。事業者なら当然のそんなことは言うだろう。揚げ足を取るつもりではないが、その貢献と同時に「計画的に緑化をすすめ」て、地域環境との共生をすすめるというくだりに、ちょっと違和感を覚えた。
 
 日本石灰協会・日本石灰工業組合のHPには
  「石灰の用途としては上・下水道用、食品添加物用、肥料用、鉄鋼用、化学用、土木・建築用、公害防止用など幅広く使われていて、社会に貢献しています。 石灰は暮らしの中で欠かせない基礎素材です。」と石灰の用途を示している。確かに日常の生活に使われている素材であることは違いないことだ。だがそれだけの簡単なことがらではない。

セメント」のキーワードでNETを探ると、「セメントの主原料は石灰石、粘土、珪石、鉄原料であるが、一般にセメント1トンを生産するためには石灰石を約 1200Kg、粘土を 240Kg、珪石を 40Kg、鉄原料を 30Kg、石膏を 30Kg 必要とされている」とある。さらに、「セメントはそのほとんどがコンクリートとして使用されていて、社団法人セメント協会資料によると、生コンクリートの組成はセメント(13.1)、粗骨材:砂利(40.5)、細骨材:砂(38.5)、水(7.8)、混和剤(0.1)である」と記述されている。なんのことはない、コンクリートの組成は90%以上「山と川」から運ばれているものだ。

 コンクリートはその使途は言うまでもないことだが、不必要な道路であり止めどもない再開発のビルであり、いらないダムであり豪華な港湾施設であり、あの東北の400キロの防潮堤だ。リニア新幹線のトンネルにはどれだけ使うことになるのだろうか。一度壊された自然の環境はそうそう元に戻るものではない。40年もかかって緑化してきたことは無とは言えないにしても、それだけかかっても前の環境には戻らないし戻せない。

 「経済成長」を唯一の目標にしてきて、なおかつまだ続けることはもういい加減に止めるべきだ。日本百名山・霊峰伊吹山が泣いている。