2017年4月4日火曜日

魚がいなけりゃ釣りは成り立たない

スリランカの釣り

 桜の開花時期を迎えると、水が温んでくるから釣りもシーズインとなる。テレビ放映でスリランカの海岸で釣りをしている場面がでてきた。番組はネコの写真を撮り歩く趣旨のものだったのだが、波打ち際に木の枝を立ててその木に上って釣りをするところを背景にしていたので、思わずスマホで写真を撮ってしまった。海岸から23メートル程度はなれたところに、「ペッタ」と呼ばれる竹馬のような棒を立てて、そこに登り、エサもつけずに糸をたらして釣りをするのだとか。潮が満ちてくれば相当の水深になるが、また引いていくときまで、そこに乗ったまま釣りを続けるわけだ。「竹馬漁」と表しているものもあるが、この釣りはエサをつけないで釣るらしい。それほど魚影が濃いということになる。

 これとよく似たものが日本でも「脚立釣り」として60年前に存在していた。能登半島のどこだったかは忘れたが、木を組んだものが残してあったのを見たことがある。記録として観光用に残されていた。戦後の高度経済成長期に東京湾奥で湾岸の埋め立てが無謀に進められて、千葉県浦安や長浦海岸で初夏を楽しんだ「アオギスの脚立釣り」はなくなってしまった。

 スリランカの漁法をみると、これは日本でも漁法としていたものだろう。江戸時代には東京湾のいたるところでこの風流なつりが見られたらしい。アオギスの生息環境がなくなったのは、それだけ生態系が壊されてしまったことによるものだ。当然にも東京湾の漁獲量は減少の一路になり漁業者は激減した。かつては豊饒の海と称された東京湾は、埋め立てで甚大な影響を受けた。

 60年前には、海岸にでればどこにでもアサリは湧いていたし、今は絶滅危惧種になったハマグリも生息していた。潮干狩りの業者がアサリは撒いて、日数を置いてから客に獲らせていたが、アサリは撒いてから獲るもの?と子供心に思っていたほどだった。埋め立てによって、大部分が改変されてしまったうえに、「公害」で痛めつけられた結果は、アサリのタネをほかに求めて、海に撒いて育てるようになっていることにも現れている。

 神奈川県水産技術センターの主任研究員をされている工藤孝浩さんが、「東京湾は日本で最も人間に痛めつけられた海」と、魚の生息環境を取り戻すためアマモの繁殖活動を続け、また啓発活動をされている。一度壊してしまった自然を取り戻すのは容易なことではない。アオギスの養殖放流によって復活を図ろうという試みもされたが、うまくいっていないらしい。アオギスの脚立釣りを復活させようという催しが20149月に木更津で実施されたとのことだ。結果がどうだったかはわからないが、釣り文化の継承が意識されていることはうれしい。

→東京湾は日本で最も人間に痛めつけられた海と語る工藤さん

→アオギス専用の竿写真あり

→脚立づり復活