2013年6月24日月曜日

役得でつまみ食ったのはマスコミだ

産経新聞 622()1820分配信
職員による不適切な事務処理の続発を受けて、訓示をする河野昌弘市長=兵庫県西宮市役所(写真:産経新聞)
 「もったいない」。そんな理由から、兵庫県西宮市の半数以上の公立保育所で調理員らが余った給食を食べていたことが明らかになった。余った給食は廃棄される決まりで、保育所長会でも「食べてはいけない」と取り決めていたが、周知徹底されていなかった。この問題で市は、所管部署の幹部らを文書訓告としたものの、調理員らについては「食べてはだめと知らなかった」として処分を見送った。給食費を払ってないのに“役得”でつまみ食いをしていた行為は、市民の目にはどう映るのだろうか。(吉田智香)
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 給食費を払っていないのに“役得”でつまみ食いをしていた行為が、市民の目から見てどうなんだろうという提起に、ちょっと違和感を感じた。揚げ足をとるつもりでもないが、払えば役得でないからいいということにもなるが、そういう質の問題なのだろうか。余ったものであれば廃棄すればいいという「取り決め」がその整理になっているのは、通常のことかもしれないが、考えたいのは「余ったもの」の方だ。

 食べ物は賞味期限を目安にするが、本来、期限切れでも食べられるものもあるので、色をよく見てみたり、臭いを嗅いだりして、場合によっては味わってみて判断をするのが、「もったいない」の解決法だった。そうする人は結構いるだろうと思う。
 コンビニでは賞味期限が切れただけでお弁当などを廃棄、消費期限までまだ34日あるようなパック入り豆腐、パンや麺類などがトラックに山積みで廃棄されるということもあるらしい。安く仕入れて大量に流通させるやりかたでは、「賞味期限」によって売れなくなるから、処分したとしても割に合うという計算なのだろう。

 食品廃棄物は年間500万トンから800万トンあるとされ、昨年のコメの生産量852万トンに匹敵するくらいのものを廃棄しているという。賞味期限や消費期限切れ、期間限定商品の売れ残り、試食品、へこんだ缶詰、規格外農産物、賞味期限の印刷ミスなども食品ロスとして廃棄されるとか。
 
 家畜の餌などとして利用されるのは一部で、大半は焼却や埋め立て処分されるそうだ。食べるために作られた食品が、傷んでもいなくてもそのままゴミとなっているのは、もったいないと言わないのだろうか。ご飯粒ひとつさえ残さずに食べるようしてきたのは、食料を大事にしようということでやってきたことだ。
 納豆は冷凍保存もできる。家庭ではちょっと気をつけていれば、食品を捨てることはほとんどないと言えるだろう。
核家族化だとか、賃金が少なくて結婚もできない若者が、料理に縁遠くなって、そういった食文化が、伝わらなくなってきた事情もあるのかもしれない。

 戦前の庶民の暮らしも楽でなかったろうが、戦後の食糧事情を体験したものには、大量に廃棄されることに釈然としない思いを持つ。西宮市は「食べてはだめと知らなかった」として処分を見送ったとのことだが、食の無駄をなくす方向からの検討も、しなくちゃならないのではないだろうか。「金を払わずに役得でつまみ食い」とことさら問題に持ち上げたいのらしいが、役得でつまみ食っている人は外にいくらでもいる。首相官邸に呼ばれて、役得でつまみ食ったのはマスコミの諸氏ではなかったのかな。