3年前に能登半島を回って、石川県輪島市白米(しらよね)町の棚田を撮った。5月でちょうど田植えを終えたばかりの頃だった。この田を使う農家はすでになく、地元の町と隣の3軒ばかりの農家が協力して「オーナー制度」で田を保全しているということだった。
ここで小泉純一郎のオーナー名をみて、唖然とした。構造改革ということで、農業に競争原理を取り入れ、事業者が参入できるようにした。農家には夢がもてずに跡継ぎがいないと、止めざるを得ないところが多く出た。農地は減反で狭められ、「放棄地」で荒れた。その立役者が田のオーナーになるなんて、まさか罪滅ぼしじゃないんでしょうね。
コメを生業として生きてきた農家を抹消、今の言葉でリセットして、「観光農業」への変身をさせた。グリーンツーリズムだのエコツーリズムとか、外国の手法を取り入ることで、観光振興で金が落ちるようにと、どこにでもあるようなスタイルを取ろうという。それしかないのだろうか。
日本の文化と横文字の国の文化は歴史も風土も違う。農業を再生させるという展望とは、ちょっと違っていると思うが。
名称の由来を「数が多いので千枚田と呼ばれるが、[狭い田]」からの転という説もある」としている。古くからの農家の苦労を思わせて、意味合いが哀れだ。
ちょうど一年前にホームページを立ち上げた「能登半島輪島[白米千枚田]公式ホームページ」は2011年3月29日にテストしたまま、完成してない。
冬の能登・白米千枚田は訪れる人も少ない。昨年6月に羽咋市以北の4市4町が「能登の里山里海」として世界農業遺産に登録された。今は田に隣接する山側に数軒の家も人の気配がない。田植え時、取り入れの頃は賑わうのだろうなと、撮り歩きながらふと想像した。
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