2012年9月1日土曜日

江田島の牡蠣ひび


 江田島の別荘に泊めていただいた帰り道に、海の浅場に「牡蠣ひび」を見た。

 8月ごろ筏に貝殻とビニールで造った「暖簾」を海につるすと、泳いでいた牡蠣の幼生が暖簾に付く(採苗)。しかしそのままでは1~2か月で死んでしまうので、海から引き揚げて海岸に並べて干す。最初は干満で海の水から出るところに置き、冬の間は一日中冷たい風のあたるところに干すことで、小さい牡蠣は丈夫になる。冬から春を過ごして暖簾を乗り換え、筏にぶらさげて海に戻され、暖かい海で十分なプランクトンを食べて育つ。
 
 牡蠣が大きく育つためには、プランクトンが豊富であることがいいらしい。東京湾奥の三番瀬干潟に、牡蠣礁が発達していると聞いた。干潟で潮の干満で空気に触れることや、波が穏やかなこと、有機物が供給されることがつくりだすものだろう。貴重な自然を守ろうとラムサール条約登録地へと運動が続いている。

 東京湾臨海部のお台場公園「人口干潟」は、下水処理水の浄化がしきれないため、一部汚染水が流れ込んでいる。海で遊ぶ場合いは、あまり酷いから、膝までしか入ってはいけないという制限をしている。

 他から海水を引いて注入したりしているが、はかばかしくなく、ついに(というべきか)牡蠣礁を造成して浄化しようという試みになった。牡蠣の浄化能力に期待して。自然をないがしろにして都市づくり、経済の発展、収益追求がされた結果がこんな可笑しなことになる。


 広島の牡蠣の養殖は室町時代に始まった。海岸に石を撒いておいて、牡蠣のついた石を集めて浅い海辺に移して育てた。自然との調和とはこれが原点だろう。原点をとっくになくして、温暖化の心配を人類の課題としなければならなくなった。これを発展だの幸せというのだろうか。


江田島の海(瀬戸内
東京湾お台場